運動不足解消のため、久しぶりに筋トレを行うと避けて通ることのできないことが、翌日の筋肉痛です。痛みがあると筋トレを行うことに消極的になりますが、1日休みを入れてそのままやめてしまうことも避けたいところです。
では、筋肉痛を抱えたままで筋トレを行うことに効果はあるのでしょうか。
当記事では、超回復のメカニズムや筋肉痛を予防する・和らげる方法、筋トレを継続する方法について解説します。筋肉痛の仕組みについて理解を深め、効果的に筋トレを行いましょう。
目次
結論からいうと、筋肉痛がある状態で同じ部位の筋トレを行うことは好ましくありません。
筋肉痛は、筋トレなどによって筋肉が損傷し、炎症を起こしている状態です。一度破壊された筋繊維は時間が経過すれば修復されますが、筋繊維の修復には48~72時間の休養が必要です。十分な休養と栄養摂取を行うことで、筋繊維は破壊される前よりも強く、太い状態で回復します。
筋繊維が修復される過程を「超回復」と呼び、超回復に関する理論を「超回復理論」といいます。超回復は筋トレによって破壊された筋繊維を修復している段階です。そのため、筋肉痛がある状態で筋トレを行うと、筋肉にとっては追い討ちとなり超回復が起きません。したがって、筋肉痛がある中でトレーニングを行っても効果はないと言えます。
次に、先ほど紹介した「超回復」のメカニズムについて、詳しく説明します。
超回復とは、筋肉が損傷し破壊されたあと、修復する際に十分な休息と栄養を摂ることで、筋肉がより強くなって修復されることです。超回復は、筋トレのあとに一晩眠れば終わっているものではありません。一般的に、超回復には24~48時間ほど必要となります。
「Bergström & Hultman」が1966年に発表した論文では、運動直後に十分な糖質を摂ることで、24~48時間後には「グリコーゲン超回復」と呼ばれる現象が起きることが報告されています。
出典:早稲田大学リポジトリ「効果的な筋グリコーゲン超回復法の検討 : 博士(人間科学)学位論文」
また、筋繊維の修復を行う際に必要となる成分は、タンパク質です。超回復には休息のほかに、筋肉のもととなる栄養素が欠かせません。
筋肉痛が起こる原因は、医学的にはっきりと解明されていません。運動で分泌される乳酸が溜まって筋肉痛が引き起こされるという説が有名ですが、近年では否定されるようになりました。
筋トレなどの運動をした覚えがないのに痛みを感じる場合は、下記のような原因も考えられます。
ここでは、筋トレによる筋肉痛の主な原因を解説します。
筋肉痛は、筋トレなどの運動後数時間から数日後に起こるのが一般的です。遅れてやってくる筋肉痛は遅発性筋肉痛と呼ばれ、筋肉を伸ばしながら負荷をかける伸張性運動などで起こりやすいとされています。
遅発性筋肉痛の原因は、筋繊維の炎症反応によるものとする説が近年の主流です。筋肉は数千もの筋繊維が集まってできています。筋トレなどの運動をすると、筋繊維が少しずつ傷ついて炎症を起こすため、痛みが発生するという考え方です。
また、筋繊維の損傷を伴わない遅発性筋肉痛という新しい説も注目されています。筋繊維の炎症がなくても、筋肉疲労によるさまざまな作用によって神経過敏になった結果、普段は感じないレベルの痛みに反応してしまうというものです。
筋肉痛の中には、筋トレの途中や直後に痛みが起こる即発性筋痛もあります。急性筋肉痛とも呼ばれ、筋肉が部分的に硬くなったような痛みが特徴です。筋トレだけではなく、短距離走などの急に激しく体を動かす運動で発生しやすいと言われています。
即発性筋痛の原因としては、血行不良に加え、筋肉への物理的ダメージなどが考えられます。筋トレなどの筋肉負荷が大きい運動では、過度の緊張状態が続き、血行不良になりがちです。血の巡りが悪くなると、筋肉の代謝物である水素イオンが溜まりやすくなるため、筋肉痛が起こるとされています。
さらに、筋肉が部分的に断裂するなど、運動による物理的なダメージを受けることで痛みが発生する場合もあります。
筋トレを継続するために、筋肉痛をどのように予防すればよいのか、困っている方も多いのではないでしょうか。筋肉痛は筋トレメニューの前後にストレッチをしたり、日頃から運動習慣をつけたりすることで防げる場合があります。
具体的な予防法として、次の4つを解説します。
運動前にウォーミングアップして体を十分に温めると血行がよくなるため、筋肉痛や怪我の予防におすすめです。筋肉が硬い状態で急激な負荷がかかると、筋肉痛や筋肉断裂のリスクが高まってしまいます。
ストレッチや軽いウォーキングなどで準備運動を行い、運動に適した柔軟性のある筋肉に整えるよう意識しましょう。ストレッチであれば、10分前後の時間をかけて、筋トレで使う筋肉をゆっくり伸ばすのが望ましいとされています。
ウォーキングや軽いランニングを取り入れる場合も、スローペースから始めるのがポイントです。少しずつランニングに移行し、体を温めて筋肉への血流を促しましょう。また、準備運動後もいきなり激しいトレーニングメニューをこなすのではなく、段階的に負荷をかけるのが大切です。
筋トレなどの激しい運動をして、急に体の動きを止めると、血流が悪化して筋肉痛が起こりやすくなります。筋トレ後に適切なケアをしなければ、疲労が蓄積して筋肉が硬くなるため、さまざまな怪我のリスクが向上する恐れもあります。筋トレを行った後にもクールダウンの運動を取り入れて、筋肉を徐々に元の状態へ戻すのが重要です。
具体的には、運動前と同様にストレッチやウォーキング、ランニングを行う方法が挙げられます。ランニングからウォーキングに移行して、トレーニングで上昇した心拍をゆっくり下げるよう意識しましょう。
運動後のストレッチは、なるべく反動をつけずにゆっくり筋肉を伸ばし、伸ばした状態をキープするイメージで丁寧に行うのがおすすめです。
日頃あまり体を動かさないのに急に筋トレを行うと、筋肉痛になる可能性が高まります。運動不足であまり使われない筋肉は毛細血管が発達しておらず、血液の循環が滞りやすいのが特徴です。
日頃から運動習慣がある場合は全身の血流状態が良好なため、筋肉痛が起こりにくいと言われています。筋肉痛予防のため、日常的に筋力トレーニングや有酸素運動などを取り入れ、筋肉を発達させておきましょう。
具体的には、週に数回以上を目安に運動習慣を身につけるのがおすすめです。筋肉痛は使う筋肉が同じ部位で、運動間隔が短いほど起こりにくいため、動かす筋肉を意識しながら運動するとよいでしょう。
筋トレなどの運動で汗をかいて体の水分が失われると血行が悪くなるため、筋肉痛につながるケースがあります。運動前や運動中もこまめな水分補給で血流がスムーズな状態を維持し、筋肉に酸素や栄養が届くように意識しましょう。
運動中だからといって、一度に多くの水分を摂取するのではなく、150~200ml程度を定期的にゆっくり飲むのが大切です。10分から15分ごとに1回の頻度を目安に、運動量や強度、季節などに合わせて水分摂取量も調整しましょう。
また、運動中の飲料は5~15度の温度が低めのほうが体に吸収されやすいと言われています。筋トレ時には、冷たい水やドリンクを準備しておくのがおすすめです。
筋肉痛時にトレーニングを続けることは効果的ではないといっても、トレーニングをしない期間に不安を感じる方もいるでしょう。筋肉痛の期間にも筋トレを行うためには、筋肉痛を和らげる必要があります。
以下では、筋肉痛を和らげる方法を5つ紹介します。日々の習慣の一環として取り入れ、筋トレを継続させましょう。
「筋肉痛がひどい=筋繊維が炎症を起こしているサイン」であるため、アイシングを行うことが大切です。
また、ある程度痛みが引いてきたら、患部を温めましょう。筋肉痛のある部分を温めることで血行が刺激され、筋肉に溜まった疲労物質が流れやすくなります。溜まっていた疲労物質が抜けると、筋繊維の修復に必要な栄養が入ってくるようになるため、超回復にかかる時間も短くなります。
筋肉痛のある部分を温める時の温度は40~50度、時間は10~20分を目安に行うと効果的です。筋肉痛のある部分を温め過ぎると、低温やけどを起こす可能性があるため注意が必要です。なお、蒸しタオルやカイロなど、自然に温度が下がるものを使うと、安全に筋肉を温めることができます。
筋肉痛を和らげるためには、運動後に軽いストレッチを行うことも効果的です。運動が終わったあとすぐに休息に入ると、筋肉痛を起こしやすくなります。運動後はストレッチを行い、少しずつ動きを止めていくことがポイントです。
運動後に軽いストレッチをする目的は、筋トレで緊張状態となった筋肉を和らげることです。可能であれば横になり、下半身から上半身に向けて筋肉を少しずつ伸ばしていくと、筋トレの効果を高めることができます。
ストレッチの時間は10~15分程度を目安とし、痛みを感じるまで強く伸ばすのではなく、心地良い強度で伸ばしましょう。
筋肉痛の軽減には、ストレッチだけでなく軽い有酸素運動も効果的と言われています。筋肉痛のときにおすすめの有酸素運動としては、ウォーキングやストレッチ、水泳などが挙げられます。
有酸素運動は血行を改善して筋肉に蓄積した疲労物質の除去を助けるため、筋肉や関節に負担をかけずに疲労回復できる点がメリットです。軽めの運動を取り入れて筋肉の回復を促す方法は、積極的回復と呼ばれます。
筋肉痛がある部位に過度な負荷がかかると、疲労感や炎症が回復する前に再び筋肉が傷ついてしまうため、筋トレの成果が十分に得られなくなる可能性があります。筋肉痛時には、無理のない範囲で、有酸素運動を20分から30分ほど取り入れてみましょう。
筋トレ後に、ストレッチやマッサージなどの外部から筋肉のケアを行うことも大切ですが、超回復を起こすためにはバランスの良い食事も欠かせません。
筋肉痛を和らげたい場合は、「タンパク質」と「ビタミンB1」が多く含まれている食材を食べることがおすすめです。それぞれの栄養が含まれている食材として、以下のものが挙げられます。
タンパク質を多く含む食材 | 100gあたり |
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鳥ささみ | 約23.0g |
鮭 | 約22.3g |
枝豆 | 約11.7g |
パルメザンチーズ | 約44.0g |
ビタミンB1を多く含む食材 | 100gあたり |
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ぶたヒレ肉 | 約1.32mg |
ぶたもも肉 | 約0.96mg |
うなぎ蒲焼 | 約0.75mg |
乾燥ごま | 約0.95mg |
上記のほかにも、タンパク質やビタミンB1を含む食材は多数あります。筋トレによる筋肉痛を和らげたい方は、タンパク質・ビタミンB1が多く含まれている食材を意識的に摂取しましょう。
睡眠中に分泌される成長ホルモンは、筋肉の修復を促す働きがあるとされています。睡眠不足では疲労物質が筋肉に蓄積しやすいため、筋肉痛が長引いたり、筋トレ効果が低下したりする可能性もあります。
筋肉痛を緩和するには、傷ついた筋肉の修復に必要な酸素や栄養素などが効率的に供給されるよう、睡眠によって十分な休息をとるのが大切です。自分にとって必要な睡眠時間を確保するだけではなく、睡眠の質も意識しましょう。
たとえば、カフェインやアルコールは入眠を妨げる恐れがあるため、摂取するタイミングに注意が必要です。就寝直前の運動や食事も、睡眠の質を確保する観点からは好ましくありません。ゆっくり入浴したり、寝室の環境を整えたりして、深い睡眠がとれるよう工夫しましょう。
筋肉痛を緩和するためには、十分な休息を取ることが最も効果的です。しかし、筋トレを1日でも休むと、そのままサボり癖がついてしまうケースは珍しくありません。筋トレの部位を変える、負荷を小さくするといった対策を取ることで、筋トレを継続することができます。
ここでは、筋肉痛に関係なく筋トレを行う2つの方法について、詳しく解説します。
「筋肉痛はあるけど筋トレをしない日をどうしても作りたくない」という方は、部位を変えて筋トレすることがおすすめです。
たとえば、太ももの筋トレをした翌日は上腕の筋トレを行う、上腕の筋トレをした翌日はお腹や背中を鍛えるなど、一週間単位で筋トレメニューのローテーションを組みましょう。部位を変えて筋トレを行うことで、超回復の時間を与えながら筋トレを続けることができます。
部位を変えながら筋トレを継続する時のポイントは、フォームを固定してトレーニングを行うことです。フォームが乱れると、本来負荷をかけたくない部位まで負荷がかかる可能性があります。
筋肉痛があるものの、引き続き同じ部位を鍛えたい場合は、負荷の小さい筋トレを行いましょう。
筋肉痛がある状態で前回と同じ負荷の筋トレを行うと、回復途中の筋肉が再び傷つき、超回復を起こすことができなくなります。超回復を起こすことができなければ、筋肉の増加や強化には至りません。また、筋肉がついている関節の可動域が狭くなり、柔軟性を失う恐れもあります。
負荷の小さい筋トレは、ダメージを負った筋繊維の回復の助けとなります。筋肉痛がある時は痛みの程度を考慮し、ダンベルなどの重量や筋トレの回数をコントロールして、筋トレを行うことが大切です。
筋肉痛がひどい場合は、休息も視野に入れて筋トレスケジュールを組むことが大切です。
痛みが出ているということは、身体が「これ以上は危険だ」と判断している証拠です。筋繊維が修復されていない状態で、さらに負荷の大きい筋トレを行うとオーバートレーニングになり、筋力が低下する恐れがあります。また、筋トレを頑張りたいと思うあまり、連続して負荷の大きいトレーニングに取り組むことは、怪我のリスクを高めることにつながります。
筋肉の増加や強化には、十分な休息が欠かせません。休息を取ることは、筋肉痛の軽減にもつながります。筋肉痛がひどい場合は無理をせず、ストレッチやマッサージなどで筋肉をケアしたり、専門家の処方を受けたりして、筋繊維の回復期間を設けましょう。
筋肉痛とは、筋肉が損傷して炎症を起こしている状態のことです。筋肉痛の期間に十分な休息を取ったり、筋繊維の修復に必要な栄養を摂ったりすることで超回復が起こり、筋肉の強化が期待できます。筋肉痛がある時も筋トレを継続したい場合は、筋肉痛になっていない部位を鍛えるたり、負荷の小さい筋トレを行ったりするとよいでしょう。
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