有酸素運動は内臓脂肪の燃焼、心肺機能向上と言った効果があり、ダイエットや体づくり、健康維持などにつながります。定期的な有酸素運動を行うことで、運動不足も解消できます。自分の続けやすい運動強度で長期間運動を行えば、生活習慣病のリスクや体力低下も防げるでしょう。
この記事では有酸素運動と無酸素運動の違い、有酸素運動の効果、運動の基準量や有酸素運動の主なメニューを解説します。これから定期的な運動を始めたいと思っている方におすすめです。
有酸素運動とは、体内の糖質や脂質をエネルギー源とし、酸素を利用することにより筋肉を動かすエネルギーを取り出す運動を指します。
有酸素運動は、筋肉への負荷が比較的軽く、運動を長期間・長時間継続しやすい特徴があります。体脂肪の減少を目的とする方は、下記のような有酸素運動に取り組んでみるとよいでしょう。
【有酸素運動の例】
「有酸素運動」に対し、酸素を使わずにグリコーゲンから作ったエネルギーを利用する運動を「無酸素運動」と言います。無酸素運動は有酸素運動と比べて運動強度が大きく、筋肉への負荷が重いため長時間の運動は難しいのが特徴です。
【無酸素運動の例】
無酸素運動は有酸素運動とは違い、酸素を使わず筋肉中に蓄えられたグリコーゲンを消費し、強い運動を瞬発的に行います。主に筋肉量の維持・筋力の向上を重視して運動を行うときには、無酸素運動が効果的です。
有酸素運動を定期的に行うと、健康増進やダイエット、ケガの予防、メンタルヘルスの改善といった心身へのさまざまな効果が期待できます。有酸素運動の効果を理解し、自身が運動する目的や運動に期待する効果に合うかどうかをふまえた上で、自身が取り組む運動について考えてみましょう。
有酸素運動は筋肉を動かすエネルギーを体内の糖質・脂質の代謝によって得るため、体脂肪の減少に効果があります。内臓脂肪が多いことで起こるメタボリックシンドロームや、高脂血症、高血圧症など生活習慣病の改善も見込めるでしょう。
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「内臓脂肪減少のための運動」
ただし、運動強度が比較的大きな有酸素運動をしたからといって、必ずしも体脂肪の減少量を大きくできるわけではありません。運動強度と体脂肪の減少量の間に強い相関性はないため、運動を生活習慣に取り入れ、続けやすい強度で長期間続けるのが大切です。
定期的に長時間の有酸素運動を行うことにより心肺機能が高まり、基本的運動能力の1つとされる「心肺持久力(全身持久力)」が向上します。心肺機能が向上すれば、運動不足が原因の息切れや動悸といった不調・悩みも改善できるでしょう。
また、体力の低下や運動不足が原因で慢性的な疲労を感じている場合、有酸素運動を行うことで疲労感が軽減される可能性があります。日常的な生活動作でも疲れが出やすい方は、有酸素運動に積極的に取り組むとよいでしょう。
気分転換やストレス解消には、有酸素運動がおすすめです。
現在に至るまで、「有酸素運動は抑うつの軽減・うつ病の症状改善に効果がある」とする研究論文が多く発表されてきました。「落ち込んでいた気持ちが運動後には晴れやかな気持ちになった」など、運動によってネガティブな気持ちからポジティブな気持ちへと変わった経験を持つ方も多いでしょう。有酸素運動がメンタルヘルス改善に影響を及ぼすメカニズムには不明な点も多いものの、精神面に与える影響は大きいと考えられます。
出典:国立研究開発法人科学技術振興機構J-STAGE「抑うつ改善に及ぼす運動の効果」
また、年齢や運動強度にもよりますが、有酸素運動は睡眠の質の改善にも効果があると言われています。睡眠不足を解消して心身の健康を維持したい方も、定期的な有酸素運動を行うとよいでしょう。
有酸素運動の活動量を評価する際には、「メッツ(METs)」という活動強度の単位を採用した「活動記録法」を利用するとよいでしょう。
年齢 | メッツの基準値 |
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18〜64歳 | 【身体活動の基準】3メッツ以上の強度の身体活動を、1週間あたり23メッツ/時行う
【運動の基準】3メッツ以上の強度の運動を1週間あたり4メッツ/時行う |
65歳以上 | 【身体活動(運動を含む生活活動)の基準】身体活動を1週間あたり10メッツ/時行う
※強度や運動内容は問わない |
【メッツ(METs)を用いたエネルギー消費量の計算式】
エネルギー消費量(kcal)=身体活動量(METs・時)×体重(kg)×1.0
出典:厚生労働省e-ヘルスネット「健康づくりのための身体活動基準2013」
代表的な有酸素運動について、体重60kgの方が30分間の運動・スポーツを行った場合の消費カロリーの概算を負荷の強度別に紹介します。それぞれの運動を効果的に行うポイントも併せて確認し、自分に合った運動を生活に取り入れましょう。
ウォーキング・ジョギング・ランニングのメッツと消費カロリー | ||
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運動名 | メッツ | 30分運動した場合の消費カロリー(体重60kgで計算) |
歩行(時速4.5-5.1km) | 3.5 | 約129kcal |
運動目的のウォーキング(時速5.6km) | 4.3 | 約151kcal |
早歩き(時速6.4km) | 5.0 | 約175kcal |
ジョギング | 7.0 | 約210kcal |
ランニング(時速8.0km) | 8.3 | 約249kcal |
ランニング(時速10.8km) | 10.5 | 約315kcal |
出典:独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」
ウォーキングやジョギング、ランニングを効果的に行うためには、正しい姿勢・フォームを意識するのが大切です。呼吸の乱れや息苦しさを感じない程度の強度で、なるべく長い時間運動できるペースを心がけましょう。スポーツウェアなどの運動しやすい服を着用し、準備運動やストレッチを行うこともポイントです。
サイクリング・エルゴメーターのメッツと消費カロリー | ||
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運動名 | メッツ | 30分運動した場合の消費カロリー(体重60kgで計算) |
サイクリング(時速16.1km未満) | 4.0 | 約120kcal |
サイクリング(時速22.5-25.6km) | 8.0 | 約240kcal |
サイクリング(山道の上り坂) | 14.0 | 約420kcal |
エルゴメーター(30-50ワット) | 3.5 | 約105kcal |
エルゴメーター(101-160ワット) | 8.8 | 約264kcal |
エルゴメーター(201-270ワット) | 14.0 | 約420kcal |
出典:独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」
サイクリング・エルゴメーター初心者の方は、まずは運動しながら会話ができる程度の運動強度からスタートしましょう。「通勤・通学」や「テレビを見ながら」など、日常生活に取り入れて運動習慣を身につけ、運動量を確保することが大切です。自転車やエルゴメーターを自分の体に合わせて調節し、体への負担の少ない姿勢で運動しましょう。
水泳のメッツと消費カロリー | ||
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運動名 | メッツ | 30分運動した場合の消費カロリー(体重60kgで計算) |
水泳(クロール;分速45.7m未満) | 8.3 | 約249kcal |
水泳(クロール;分速68.6m未満) | 10.0 | 約300kcal |
水泳(平泳ぎ;レクリエーション) | 5.3 | 約159kcal |
水泳(平泳ぎ;全般・トレーニング・競技) | 10.3 | 約309kcal |
水泳(背泳ぎ;レクリエーション) | 4.8 | 約144kcal |
水泳(背泳ぎ;全般・トレーニング・競技) | 9.5 | 約285kcal |
水泳(バタフライ;全般) | 13.8 | 約414kcal |
出典:独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」
有酸素運動を目的として泳ぐ場合には、「長距離を泳ぐこと」よりも「長時間泳ぐこと」を重視しましょう。1回あたり30分程度を目安として、無理のない泳ぎ方・速度で水中運動を行うのがおすすめです。
エアロビクスダンスのメッツと消費カロリー | ||
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運動名 | メッツ | 30分運動した場合の消費カロリー(体重60kgで計算) |
エアロビクス | 7.3 | 約219kcal |
出典:独立行政法人国立健康・栄養研究所「改訂版 身体活動のメッツ(METs)表」
エアロビクスダンスを行う際には、音楽のリズム・テンポに合わせてなるべく体を大きく動かすことが大切です。全身を大きく動かす運動であるため、こまめな水分補給・休憩や運動前後のストレッチも欠かさないようにしましょう。
有酸素運動とは、糖質や脂質をエネルギー源に、酸素を利用して筋肉を動かすエネルギーを取り出す運動です。筋肉への負荷が比較的軽く、運動を長時間継続しやすい特徴があります。
筋肉を動かすエネルギーを体内の糖質・脂質の代謝によって得るため、有酸素運動は体脂肪の減少に効果的です。また、酸素を取り込むことで心肺機能が向上する、長時間の運動によりメンタルヘルスが改善するといった点もメリットです。
主な有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、サイクリング、水泳、エアロビクスダンスなどがあります。有酸素運動の効果を理解し、自身が運動する目的や運動に期待する効果に合うかどうかをふまえて運動に取り組みましょう。